
ある健康食品ECの広告テストで、19本の動画を配信していました。受注は7件です。
そのうち4件が、1本の動画から出ていました。
しかもその動画は、5つのグループにしか入っていません。15グループに入っている7本は、揃って0件でした。
結論を先に書きます
受注データに、広告のIDが記録できます。
多くの媒体には、遷移先URLに広告のIDを差し込む仕組みがあります。URLにその指定を1つ足すだけで、受注データまで持ち回れます。
これができると、「どの動画から売れたか」が1本ずつ分かります。広告の管理画面では、媒体が数えたコンバージョンしか見えません。
何を足すのか
媒体ごとに書式は違いますが、考え方は同じです。
遷移先URL に、媒体が用意している「広告IDに置き換わる文字列」を足す
↓
クリックされた瞬間、媒体が実際のIDに置き換える
↓
そのIDがページに届く
↓
受注まで持ち回って、受注データに記録する
最後の1行が抜けていることがよくあります。 ページには届いているのに、受注データに残っていない状態です。
多くのカートシステムには、遷移元の情報を受注に記録する仕組みがあります。まず、その受注データにIDらしき列があるかを確認してください。
カバー率は、キャンペーンごとに大きく違います
ある事業者の直近4週の受注を調べたところ、こうなっていました。
| キャンペーン | 動画まで特定できた割合 |
|---|---|
| 自社運用A | 94.9% |
| 別媒体B | 93.5% |
| 別媒体C | 91.0% |
| 代理店運用D | 11.0% |
| 代理店運用E | 6.7% |
同じ会社の中で、94.9%と6.7%です。
差の原因は1つでした。入稿URLにIDの指定が入っているかどうかです。 入っていれば媒体が自動で埋めてくれます。入っていなければ、空のまま届きます。
技術的な問題ではありません。入稿時の設定です。
全体では47.2%でした
上のキャンペーンをまとめると、直近4週の受注2,152件のうち、動画まで特定できたのは1,015件(47.2%)でした。
半分は特定できていて、半分はできていません。 そして特定できていない側は、URLを直せば特定できるようになります。
開発は要りません。入稿URLに1行足すだけです。
媒体によって、入る列が違います
注意点があります。IDが入る列は、媒体ごとに違うことがあります。
ある事業者では、1つの媒体のIDは受注データのA列に入り、別の媒体のIDはB列に入っていました。A列だけを見て「特定できているのは5.7%だけ」と判断しかけたことがあります。
両方の列を見たら47.2%でした。
受注データの列を全部確認してください。 媒体ごとに別の列が用意されていることがあります。
19本のうち1本、という数字の読み方
冒頭の話に戻ります。受注7件のうち4件が1本の動画から出ていました。
これをそのまま「この動画が強い」と読んではいけません。
理由は件数です。7件しかありません。 1本の動画が4件取ることは、実力が同じでも起こり得ます。
ただし、配信量が3分の1なのに受注が4倍という向きは、偶然にしては強いほうです。追う価値はあります。
「見つけた」と「確かめた」は違います。 ここでは見つけただけです。
どこまで細かく見られるかには限界があります
動画ごとに判定したくなりますが、件数が足りないと何も見えません。
予算全体で640件の受注が見込めるとして、粒度ごとに割るとこうなります。
| 粒度 | 本数 | 1本あたり | 判定できるか |
|---|---|---|---|
| A/Bの2群 | 2 | 321 | 見える |
| 週ごと | 7 | 92 | 粗いが見える |
| 広告グループ | 32 | 20 | 見えない |
| 動画1本ずつ | 19 | 34 | 粗い |
動画19本なら1本34件で、粗いながら判定の入口には立てます。
ただし、これは「ユニークな動画が19本」だからです。 同じ動画を複数のグループに入れている場合、広告の本数ではなく、動画の本数で数えてください。
ある事業者では、広告が180本ありました。しかし中身はユニークな動画19本を、複数のグループに入れたものでした。 180で割ると1本あたり3.6件になり、判定不能に見えます。19で割れば34件です。
数え方を間違えると、判定できるものを「できない」と諦めることになります。
期間と工数の目安
入稿URLを直すのは、その場でできます。 媒体の管理画面で編集するだけです。
ただし、過去の配信には遡って適用されません。 直した日以降の受注から、IDが入り始めます。
判定に必要な件数がたまるまでの期間は、動画の本数と受注件数で決まります。 上の表を目安にしてください。
よくある質問
どの媒体でも同じ仕組みがありますか
主要な媒体には、遷移先URLに情報を差し込む仕組みがあります。書式と、差し込める項目は媒体ごとに違います。 必ず各媒体の仕様を確認してください。
代理店に運用を任せている場合はどうしますか
入稿URLの書式を指定してください。 代理店側で設定する項目なので、依頼すれば入れてもらえます。
上の実測でも、カバー率が低かったのは代理店運用のキャンペーンでした。技術の問題ではなく、指定していなかっただけの可能性があります。
受注データに列が無い場合は
カートシステムの設定を確認してください。遷移元の情報を記録する機能があることが多いです。 無い場合は、遷移先URLをパラメータで分ける方法がありますが、受注まで持ち回る設計が必要になります。
何件たまれば「この動画が強い」と言えますか
見たい差の大きさによります。3倍の差なら比較的少なくて済みますが、1.5倍を見分けるには10倍近い件数が要ります。 詳しくはA/Bテストのばらつきに書きました。
特定できていない53%は、どう扱えばいいですか
「0件」ではなく「不明」として、件数を明示してください。 混ぜると、特定できている広告の成果が実際より良く見えます。
動画ごとに判定できたら、何をしますか
勝った動画に予算を寄せる、という使い方が一般的です。ただし予算を増やすと単価が悪化することがあります。 詳しくは予算を増やすとCPAはどうなるかをご覧ください。
この記事で扱わなかったこと
- 媒体の数字と受注のズレ →媒体のCVと受注のズレ
- 差が本物かどうかの判定 →A/Bテストのばらつき
- 顧客の識別と名簿の作り方 →顧客IDの紐づけ
★ 断定していないこと
私は、1本の動画が強いことを確かめていません。 受注7件のうち4件という観測です。件数が足りません。
私は、御社のカバー率が47.2%だと言っていません。 ある1社の直近4週の実測です。
私は、入稿URLを直せば必ずカバー率が上がると確認していません。 同じ事業者の中で94.9%のキャンペーンがあることから推測していますが、直した前後で比較した結果ではありません。
私は、各媒体の仕様を網羅的に確認していません。 書式は媒体ごとに違い、変更されることがあります。
相談先
複数のクリエイティブを配信しているが、どれが売れたか分からない。そうした段階でご相談ください。
弊社は単品リピート通販・D2C向けに、ECシステム、CRM、運営代行、新規顧客獲得、物流までを扱っています。入稿の設計もその一部です。
まず、受注データに広告のIDが入っているかを確認するところから始めます。
出典・注記
- 本文中の実測値(19本中1本が受注7件中4件、カバー率94.9%〜6.7%、全体47.2%、広告180本に対しユニーク動画19本)は、国内の健康食品EC1社における2026年7月〜8月の実測です。事業者名・商品名・媒体名・代理店名は伏せています
- 判定に必要な件数の目安は、2標本の比率の検定(有意水準5%・両側、検出力80%)に基づく試算です