
Webで申し込めるのに、解約は電話だけ。この形は、いま規律の対象として検討されています。自社が当てはまるかを20分で確認できる点検表を作りました。自社サイトを開いて、上から順に「はい」「いいえ」で答えてください。答えられない項目があれば、そこが最初の課題です。
いま検討されていること
消費者庁のデジタル取引・特定商取引法等検討会は、2026年8月24日の第8回で中間取りまとめ(案)を資料として示しました。そこには「解約手続を不当に遅延させる行為や、契約手続に比して合理的理由なく過度に複雑な解約手続を課す行為」を違法行為として規律対象とすべき、という趣旨の記述があります。これは案であり、確定した規制内容ではありません。法案の提出時期の記載もありません。規制の中身は定期購入の解約妨害が法律で禁止される見通しをまとめた記事で扱っています。
使い方
一人で20分あれば終わります。自社サイトを、ログインした状態と未ログインの状態の両方で開いてください。スマートフォンでも同じ手順を通します。画面の幅が変わると、ボタンの位置関係が変わることがあるためです。
社内の人だけで見ると、導線を知っているぶん短く感じます。可能であれば、初めて触る人に操作してもらい、横で見てください。
1. 解約の入口
- [ ] マイページのトップから解約ページまで、3クリック以内で着きますか
- [ ] サイト内検索で「解約」と入れて、解約ページが結果に出ますか
- [ ] FAQに解約手順が書かれていますか
- [ ] 解約ページがnoindexになっていませんか
見つからない導線は、ない導線と同じです。まず、たどり着けるかどうかを確認します。
2. 解約の手段
- [ ] Webで申し込めるなら、Webで解約できますか
- [ ] 解約の受付が電話のみになっていませんか
- [ ] 解約の受付時間は、申込みの受付時間と同じ広さですか
- [ ] その電話番号は、実際にかけて繋がりますか
申込みと解約で手段が非対称になっている状態が、いま最も強く議論されている形です。
3. 手続きの長さ
- [ ] 申込みのステップ数と解約のステップ数を数えて、解約のほうが多くありませんか
- [ ] 解約に必要な入力項目は、申込みより少ないですか
- [ ] 引き止めの画面は何枚ありますか。2枚以上ではありませんか
- [ ] 解約前のアンケートが必須回答になっていませんか
「契約手続に比して」という比較が判断の軸になります。数えれば比べられます。
4. 表示の中身
- [ ] 支払総額が1か所で分かりますか
- [ ] 定期であることと回数条件が、離れた場所に書かれていませんか
- [ ] 「いつでも解約可能」と書きながら、別の場所で条件を付けていませんか
- [ ] 次回発送の何日前までに手続きが必要かが明記されていますか
ここは現行の特定商取引法の最終確認画面のルールに関わります。すでに施行済みの部分です。
5. 言葉づかい
- [ ] 「本当によろしいですか」を何回聞いていますか。1回を超えていませんか
- [ ] 「損をします」など、不安を与える文言がありませんか
- [ ] 継続ボタンと解約ボタンの大きさ・色の差が、極端になっていませんか
- [ ] 選択肢の初期値が、継続側に寄っていませんか
同じ機能でも、言葉と見た目で意味が変わります。ここは実装ではなく編集の問題です。
6. 手続き後
- [ ] 解約完了の通知が、メール等で届きますか
- [ ] 完了画面に「いつまで届くか」が書かれていますか
- [ ] 解約後の再申込み案内が、過剰な頻度で送られていませんか
完了が伝わらないと、顧客は解約できたかどうかを確認するために問い合わせます。
点数の読み方
合計で何個チェックが付いたかは見ません。「いいえ」が1つでもある項目から直します。
優先順位は、カテゴリ2 → 4 → 3 → 5 → 1 → 6 の順です。法的なリスクが高い順に並べています。カテゴリ2と4は現行法や検討中の論点に直接あたる部分です。カテゴリ5と1は、影響は大きいものの、判断の幅が残ります。
直す順番
まず、Web上の解約受付を作ります。これが最も効きます。
次に、受付時間を申込みと揃えます。時間の設定変更だけで済むことがあります。
そのうえで、解約のステップ数と入力項目を減らします。引き止めの画面は1枚までにします。
文言とボタンの見た目を直します。ここは開発を待たずに着手できます。
最後に、完了通知と完了画面の表示を整えます。
★ この点検表について
これは法的な適合性の判定ではありません。私は弁護士ではありません。この表は、検討会の公開資料と現行の特定商取引法のルールから作った実務用のたたき台です。項目の網羅性も保証できません。最終的な判断は、法務部門や顧問弁護士に確認してください。
この記事で扱わなかったこと
直したあとに解約率がどうなるかは書いていません。 導線を素直にすると、短期の解約数は増えることがあります。そのうえで何を打つかは、解約率を下げる7つの打ち手に整理しました。
解約前アンケートの中身の設計も外しました。必須にしないことだけをここでは書いています。設問の作り方と、そこから分かることの限界は解約理由の選択式アンケートで分からないことで扱っています。
相談先
自社のデータで何が出せるかを確認するところから始められます。受注データとコールセンターの通話記録が手元にあれば、導線のどこで人が止まっているかを整理できます。
点検表で「いいえ」が付いた項目を、実際の解約データと突き合わせるところからで構いません。
出典・注記
- 消費者庁「デジタル取引・特定商取引法等検討会」は2026年1月22日に第1回を開催し、2026年8月24日の第8回で中間取りまとめ(案)が資料として提示されました。本文中の「解約手続を不当に遅延させる行為や、契約手続に比して合理的理由なく過度に複雑な解約手続を課す行為」という表現は、同(案)の記述に基づきます。案であり、確定した規制内容ではありません。
- 消費者庁「消費者契約法検討会」は別の法律に関する別の検討会です。「解約妨害の禁止」「分かりやすくスムーズな解約方法の提供」などが論点として挙げられており、今秋に中間取りまとめ案を公表する方針と報じられています。
- カテゴリ4の項目は、2022年6月施行の改正特定商取引法による最終確認画面の表示義務(分量、価格、支払時期・方法、引渡し時期、申込みの撤回・解除に関すること等)を踏まえています。これはすでに施行済みの現行ルールです。
- 各項目の判定基準となる「3クリック以内」「引き止めは1枚まで」といった数値は、法令が定めた基準ではありません。点検の目安として置いた値です。