定期購入の解約率を下げる7つの打ち手と、やってはいけない1つ

解約規制・CDP
定期購入の解約率を下げる7つの打ち手と、やってはいけない1つ

解約率を下げる方法は、大きく2種類あります。「解約させない」と「解約したくならない」です。前者は、いま法規制の対象になりつつあります。事実上、使えなくなる見通しです。残るのは後者だけです。この記事では、後者に入る打ち手を7つに整理しました。あわせて、いま外すべき打ち手を1つ挙げます。自社の施策リストのどれを残してどれを畳むかが判断できる状態を目指しています。

解約率を下げる打ち手は、2つの箱に分かれる

打ち手を並べる前に、分類をしておきます。ここを混ぜると議論が進みません。

1つ目の箱は「解約させない」です。解約ページを見つけにくくする。電話でしか受け付けない。何度も確認画面を挟む。短期の解約数は減ります。ただし、顧客の意思は変わっていません。次の請求で戻ってきます。

2つ目の箱は「解約したくならない」です。効果実感までの支援、配送条件の柔軟化、決済の失敗の回収、獲得段階での期待値の調整などです。手間はかかります。効果が出るまでの時間も長いです。ただし、こちらは積み上がります。

これまで多くの現場で使われてきたのは、1つ目の箱でした。実装が速く、効果が数字にすぐ出るからです。その前提が変わりつつあります。消費者庁の検討会では、定期購入の解約妨害を法律で規律する方向の議論が進んでいます。1つ目の箱は、遠からず使えなくなると考えておくのが安全です。

先に決めること。どの解約率を見るのか

打ち手より先に、測り方を決めてください。ここが決まっていない状態で施策を並べても、効いたかどうかが判定できません。

よく使われる指標は3つあり、それぞれ別のものを見ています。

指標見ているもの向いている用途
月次解約率ある月に何%が抜けたか全体の推移監視、経営報告
コホート別継続率同じ月に獲得した人が何回目まで残るか施策の効果検証、広告媒体の評価
F2転換率・F3転換率1回目から2回目、2回目から3回目に進んだ割合初期離脱の把握、獲得の質の判定

月次解約率は、全社で見るには便利です。ただし、獲得数が増えた月は下がり、減った月は上がります。新規が多いほど分母が膨らむからです。施策の評価には向きません。

コホート別継続率は、獲得月ごとに追跡します。8月獲得の人が2回目、3回目、6回目にどれだけ残ったかを見ます。施策を打った月のコホートと、打つ前のコホートを比べられます。効果検証をするなら、こちらです。

F2転換率は、単品リピート通販でもっとも動く数字です。離脱はF1からF2に集中します。ここが動くと、全体の継続率も動きます。

分母の取り方で数字は変わる

同じ「月次解約率」でも、分母を何にするかで値が変わります。期首在籍者数を分母に取る場合と、期末在籍者数を取る場合と、期首と期末の平均を取る場合があります。当月に獲得して当月に解約した人を分子に入れるかどうかでも変わります。

どれが正しいということはありません。社内で一つに決めて、定義を書き残してください。決めずに運用すると、部署ごとに違う数字が出ます。会議の時間が擦り合わせで消えます。

打ち手1:初回到着後1週間のフォローを設計する

最初の離脱は、効果を実感する前に起きます。健康食品でも化粧品でも、体感が出るまでには時間がかかります。その前に「思っていたのと違う」と判断されると、2回目には進みません。

ここでやることは、使い方の共有です。使うタイミング、続ける目安の期間、初期に起きうる変化。到着の翌日、3日後、7日後に、内容を変えて届けます。同じ内容を3回送るのは逆効果です。

送る手段はメールでもLINEでもSMSでも構いません。どれが効くかは事業で違います。チャネル別の効き方の測り方は別記事にまとめました

打ち手2:配送間隔と数量の変更を、解約と同じ場所に置く

解約の理由の一部は「余っている」です。これは商品への不満ではありません。配送のペースが生活に合っていないだけです。

対処は、間隔の変更と数量の変更を用意することです。そして、解約を検討している人がその選択肢に気づける場所に置きます。解約ページの中に「配送間隔を変更する」という導線を置くのは、合理的な設計です。

ただし条件があります。解約の導線を邪魔しないことです。変更の提案を挟んだせいで解約ボタンが押しにくくなるなら、それは1つ目の箱に入ります。並列に置いてください。順番を後ろにする、色を薄くする、といった処理をした時点で意味が変わります。

打ち手3:F2の直前に集中投下する

施策の予算は、均等に配らないでください。F1からF2の区間に寄せます。

理由は単純で、離脱がそこに集中しているからです。F3以降の継続率は、F2を超えた顧客に限ればかなり高くなる事業が多いです。自社のコホート表を見て、どの区間で人数が落ちているかを確認してください。落ちている区間に予算を寄せるのが、いちばん効率のよい配分です。

具体的には、2回目の発送予定日の1週間前から3日前に接触します。次に届く日、内容、変更の方法を伝えます。「次回発送のお知らせを送ると解約が増える」という懸念を聞くことがあります。実際に増える事業もあります。ただし、送らなければ後から起きたはずの解約が、前倒しになっただけの可能性もあります。コホートで長期に追わないと判定できません。

打ち手4:決済エラーによる非自発的解約を回収する

ここは、多くの事業者が取りこぼしている領域です。

解約には2種類あります。顧客が意思をもって手続きした「自発的解約」と、決済が通らずに継続が止まった「非自発的解約」です。後者の原因は、カードの有効期限切れ、限度額の超過、残高不足、カードの再発行に伴う番号変更などです。

この2つを合算して解約率と呼んでいる事業者は少なくありません。合算すると、打ち手を間違えます。非自発的解約が多いのに商品改良やクーポン設計に時間を使う、という事態が起きます。

非自発的解約の顧客は、解約したい人ではありません。多くは、止まったことに気づいていません。回収の余地が大きい領域です。やることは決まっています。決済失敗の直後に通知する。再試行のスケジュールを決めておく。カード情報の更新を1画面で終わらせる。有効期限が近い顧客に事前に案内する。

まず、直近3か月の解約を2種類に分けて数えてください。比率が想像と違うことがあります。分けた瞬間に、次にやることが決まる場合があります。

打ち手5:獲得の段階で期待値を合わせる

解約は、解約の場面で決まるのではありません。多くは、広告とLPを見た時点で決まっています。

「1回で変わる」と受け取れる訴求で獲得すると、変わらなかった時点で解約されます。初回価格の安さを強調しすぎると、2回目の請求額で解約されます。

継続率を上げたいなら、獲得の質を見てください。媒体別・クリエイティブ別に、F2転換率とコホート継続率を出します。CPAが安い経路ほど継続が悪い、という結果が出ることがあります。この関係は獲得単価と解約の関係を扱った記事で詳しく書きました。

なお、最終確認画面の表示義務は2022年6月施行の改正特商法ですでに現行ルールです。分量、価格、支払時期と方法、引渡し時期、申込みの撤回や解除に関することなどの表示が求められます。打ち手以前の前提として、まず満たしてください。

打ち手6:解約理由に応じた提案の型を用意する

解約の申し出には、理由の傾向があります。価格、効果、体調、家族の事情、決済エラー。おおまかにこの5つに分かれる事業が多いです。

理由ごとに、できることは違います。価格なら数量や間隔の変更、効果なら使い方の確認と適した別商品の案内、体調なら休止、決済エラーなら情報の更新です。全部にクーポンを出すのは、割引しなくても続いた人にまで割引をすることになります。

注意点があります。用意するのは「型」であって、引き止めのスクリプトではありません。「本当によろしいですか」を重ねる台本は、打ち手ではなく妨害です。提案は1回で終え、断られたら手続きを進めます。オペレーターの評価指標を阻止件数に置くと、現場は妨害の方向へ寄ります。指標の設計もあわせて見直してください。

なお、選択式の解約理由アンケートだけでは、理由の内訳は正確にはつかめません。選択式アンケートで分からないことは別記事に整理しました

打ち手7:休止(スキップ)を用意する

解約か継続かの二択にしないでください。

余っている、しばらく使わない、支出を一時的に絞りたい。こうした事情のとき、選べるのが解約だけなら解約されます。1回スキップ、2か月休止といった選択肢があれば、関係は続きます。

休止の運用では、再開の日を明確にしてください。いつ再開するのか、その前に通知が来るのか。ここが曖昧だと、休止が事実上の自動継続に見えます。休止中でも解約はいつでもできる状態にしておきます。休止を「解約させないための迂回路」にすると、打ち手ではなくなります。

やってはいけない1つ:解約を難しくすること

外すべき打ち手は、これです。

具体的には、次のような設計を指します。Webで契約できるのに解約は電話のみ。受付を平日の日中だけに限る。解約までに何ページも遷移させる。確認画面で「本当に効果を捨てるのですか」といった、罪悪感を持たせる文言を置く。最後の1つは、英語圏でconfirmshamingと呼ばれています。

これらは、これまでグレーとして運用されてきました。その位置づけが変わりつつあります。消費者庁のデジタル取引・特定商取引法等検討会では、2026年8月24日の第8回で中間取りまとめ(案)が資料として示されました。そこには「解約手続を不当に遅延させる行為や、契約手続に比して合理的理由なく過度に複雑な解約手続を課す行為」を規律対象とすべき、という趣旨の記述があります。

これは「案」であり、確定した規制内容ではありません。法案の提出時期も記載されていません。ただし、方向は示されました。並行して消費者契約法検討会でも「解約妨害の禁止」や「分かりやすくスムーズな解約方法の提供」が論点になっています。両者が連動して制度が整えられていく見通しです。

自社の導線がどこに立っているかは、点検すれば分かります。Webで契約できてWebで解約できないサイトの点検表に、確認項目をまとめました。規制の全体像は定期購入の解約妨害が法律で禁止される見通しをまとめたハブ記事で扱っています。

この記事で断定していないこと

7つのうちどれが自社でいちばん効くかは、私には分かりません。カテゴリ、単価、リピートの周期、獲得経路の構成で変わります。ここに書いたのは、検証する順番を決めるための整理です。

効果量も数値では書いていません。他社の改善幅を自社に当てはめても、意味のある予測にはならないと考えています。効果を知る方法は、自社のコホートで前後を比べることだけです。

中間取りまとめ(案)が最終的にどの形で法制度になるかを、私は確認していません。公表資料の記述の範囲で書いています。施行時期についても記載を確認できていません。

この記事で扱わなかったこと

打ち手を「誰に」当てるかは書いていません。予兆の検知だけで一本になります。解約は予測できるのか、という記事で扱いました。

獲得の質の話は、打ち手5で触れただけです。CPAの安い媒体と解約の早さの関係は、獲得単価が安い広告ほど解約が早い場合がありますにまとめています。

解約理由の分析方法も深くは書いていません。選択式アンケートの限界は解約理由の選択式アンケートで分からないことを参照してください。

導線の点検の実務は、解約導線の点検表に分けました。自社サイトを開きながら順に確認できる形にしています。

チャネルごとの効果測定は、CRMのメール・LINE・SMSは、どれが継続率に効いているのかで扱っています。打ち手1と打ち手3の前に読むと、配信設計が決めやすくなります。

相談先

自社のデータで何が出せるかを確認するところから始められます。受注データ、広告データ、コールセンターの通話記録が手元にあれば、現状で何が言えて何が言えないかを整理できます。

解約を自発的と非自発的に分けて数えるところからで構いません。分けた数字を見ると、次に手を付ける場所が変わることがあります。コホート別の継続率が出せる状態かどうかも、あわせて確認してください。

出典・注記

  • 消費者庁「デジタル取引・特定商取引法等検討会」は2026年1月22日に第1回を開催し、2026年8月24日の第8回で中間取りまとめ(案)が資料として提示されました。本文中の「解約手続を不当に遅延させる行為や、契約手続に比して合理的理由なく過度に複雑な解約手続を課す行為」という表現は、同(案)の記述に基づきます。これは案であり、確定した規制内容ではありません。
  • 消費者庁「消費者契約法検討会」は、特定商取引法とは別の法律に関する別の検討会です。2026年8月31日に第8回の開催が予定され、今秋に中間取りまとめ案を公表する方針と報じられています。論点には「解約妨害の禁止」「分かりやすくスムーズな解約方法の提供」が挙がっています。
  • 最終確認画面の表示義務は、2022年6月施行の改正特定商取引法によるすでに施行済みのルールです。
  • 解約率や継続率の改善幅は、具体的な数値を記載していません。出どころと比較対象を確認できる数値を持っていないためです。
  • 特定のツールやサービスの性能比較は行っていません。
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