出荷データを広告まで遡ると、広告代理店にも物流会社にも出せない数字が出ます

広告計測
出荷データを広告まで遡ると、広告代理店にも物流会社にも出せない数字が出ます

倉庫の出荷明細と、広告の管理画面。この2つを繋いで見たことがある事業者は、あまり多くありません。

繋ぐと何が出るのか。ある健康食品ECの実測では、広告によって代引手数料が1.8倍違いました。 同じ商品、同じ価格です。

これは広告代理店には出せません。物流会社にも出せません。両方のデータを持っている事業者にしか出せない数字です。

結論を先に書きます

出荷データを広告まで遡ると、3つの数字が出ます。

  1. 広告別の物流コスト — 決済手段の構成が広告ごとに違うため
  2. 広告別の返品率 — 返品まで引いた利益
  3. 配送方法・地域別の原価 — サイズや地域による差

このうち返品率が最も価値があります。 返品を引かない利益は、実際より良く見えます。そして返品率は広告によって変わる可能性があります。

結合の鍵は、注文番号です

やることは単純です。

出荷データ(倉庫)
   ↓ 注文番号で結合
受注データ(カート)
   ↓ 広告コードで結合
広告データ(媒体API)

ある健康食品ECで実際に結合したところ、出荷11,758件のうち11,556件が受注と一致しました。98.3%です。

一致率が低い場合、原因はたいてい形式の違いです。片方に接頭辞が付いている。片方が数値型で片方が文字列。前後に空白がある。まず数十件を目で見て、形を揃えてください。

広告によって物流コストが変わる理由

広告そのものが配送費を変えるわけではありません。決済手段の構成が変わるからです。

代引きを選ぶ人が多い広告と、クレジットカードが多い広告があります。代引きには手数料がかかります。つまり広告の選び方が、そのまま物流コストに出ます。

ある健康食品ECの実測では、広告別の代引手数料が1件あたり97円から175円まで幅がありました。1.8倍です。

さらに同じ事業者で、後払いの比率が広告ごとに17.6%から44.0%まで違いました。2.5倍です。

後払いは、他の決済手段より「注文が入ったのに入金されない」割合が高くなります。同じ事業者の実測では、その差は18倍でした。

媒体のCPAが同じでも、後払い比率が2.5倍違えば、手元に残る数は変わります。

返品は、多くの場合データ基盤に来ていません

ここが実務で見つかった穴です。

同じ事業者のデータ基盤を確認したところ、出荷データ24,632件を全件検索して、返品を示す行が1件もありませんでした。 数量がマイナスの行も、商品名に「返品」を含む行もありません。

倉庫の管理画面には返品の記録があります。物流の請求書にも件数が載っています。データ基盤に取り込まれているのが、出荷だけだったのです。

配送方法も同じでした。請求書には「ネコポス」と書いてあるのに、データ基盤の該当列は11,758件すべて空でした。

「無い」のではなく「来ていない」だけです。 取り込む範囲を広げれば済みます。

広告別の返品率が出せると、何が変わるか

返品を引かない利益は、実際より良く見えます。これは全社で一律なら順位に影響しません。

問題は、返品率が広告ごとに違う場合です。

強い訴求で獲得した顧客は、期待値が高くなります。届いた商品との差が大きければ、返品につながる可能性があります。この場合、獲得単価の安い広告ほど返品が多い、ということが起こり得ます。

これが本当かどうかは、測らないと分かりません。そして測るには、返品データが広告まで遡れる必要があります。

期間と工数の目安

結合そのものは軽い作業です。 注文番号の形式を揃えれば、数時間で一致率が出ます。

時間がかかるのは、返品データと配送方法を取り込む範囲を広げるところです。倉庫側のシステムから何が出せるかによります。既に出荷データを取り込んでいるなら、同じ経路に項目を足す形になります。

まず現状の一致率を測ってください。98%を超えているなら、鍵は既に揃っています。 50%を切るようなら、形式の問題を先に片付けます。

物流を委託している場合

自社倉庫でなくても構いません。委託先から出荷明細のCSVが受け取れれば、結合はできます。

確認することは3つです。

  1. 出荷明細に注文番号が入っているか
  2. 返品の記録が出せるか
  3. 配送方法(宅配便かメール便か)が記録されているか

このうち2と3が抜けていることがよくあります。契約時に決めていなければ、出していないだけの場合が多いようです。 聞いてみる価値があります。

よくある質問

出荷データを広告に繋ぐ意味が分かりません。物流はコストの話ではないのですか

コストの話です。ただしそのコストが広告によって変わるので、広告の評価に効いてきます。代引き手数料も、返品による損失も、獲得した顧客の質に左右されます。

返品率は、そもそも広告で変わるものですか

分かりません。構造としてはあり得ます。 強い訴求は期待値を上げるので、実際との差が返品につながる可能性があります。ただし、これを実測した結果はまだ持っていません。

注文番号が両側で一致しません

形式の違いがほとんどです。接頭辞、数値型と文字列型、前後の空白。まず数十件を並べて目で見てください。 変換ルールが1つ見つかれば、全件が繋がることが多いようです。

倉庫が複数拠点ある場合はどうしますか

拠点ごとに単価が違うので、拠点を識別する列が要ります。 実際に確認した事業者では、拠点によって1件あたりの費用が変わっていました。1拠点だけの請求書で全体を判断すると、間違えます。

送料は誰が負担していますか

商品によります。ある事業者の売上集計では、顧客が払う送料と代引手数料が全件ゼロでした。事業者が負担しているということです。 この場合、原価計算に送料を入れる必要があります。販売価格からは見えません。

物流データを見て、まず何をすべきですか

返品と配送方法が、データ基盤に来ているかを確認してください。 来ていなければ、そこが最初の1歩です。取り込む範囲を広げるだけで、新しい分析が可能になります。

この記事で扱わなかったこと

★ 断定していないこと

私は、返品率が広告によって変わることを実測していません。 構造としてあり得ると書きましたが、確かめた結果ではありません。測れるようにすることが先です。

私は、御社の出荷データが受注と結合できると断定していません。 98.3%は、ある1社での実測です。注文番号の管理方法によって変わります。

私は、代引手数料の1.8倍差が他社でも起きると確認していません。 決済手段の構成は商材と顧客層で変わります。

私は、後払いの落ちが18倍という数字を、他の事業者で確認していません。 決済代行会社の審査基準にも左右されます。

相談先

物流を委託していて、出荷データが手元にある。しかし広告と繋がっていない。そうした段階でご相談ください。

弊社は単品リピート通販・D2C向けに、ECシステム、CRM、運営代行、新規顧客獲得、物流までを扱っています。物流と広告の両方を扱っているため、この結合を実務として設計できます。

まず現状の一致率を測るところから始めます。

出典・注記

  • 本文中の実測値(出荷と受注の一致率98.3%、代引手数料97円〜175円、後払い比率17.6%〜44.0%、後払いの落ち18倍、返品データ0件、配送方法11,758件すべて空)は、国内の健康食品EC1社における2026年8月の実測です。事業者名・商品名・倉庫名は伏せています
  • 送料と代引手数料が事業者負担である点は、同社の売上集計(2026年5月〜8月・4,308件)で確認しました
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