
同じ商品、同じ時期、同じ会社の広告です。後払いを選ぶ人の割合を広告別に見ると、こうなっていました。
| 広告 | 受注 | 後払い比率 |
|---|---|---|
| A | 342 | 44.0% |
| B | 189 | 42.9% |
| C | 384 | 27.9% |
| D | 517 | 25.0% |
| E | 502 | 17.6% |
17.6%と44.0%。2.5倍の差です。
これが広告の評価に効いてきます。
結論を先に書きます
後払いは、注文が入っても入金されないことがあります。
同じ事業者の実測では、その割合が他の決済方法の18倍でした。そして受注全体の48.7%が後払いです。
つまり、後払い比率が高い広告は、受注件数が同じでも、実際に売上になる件数が少なくなります。
媒体のCPAが同じでも、手元に残る数が変わります。
なぜ広告によって決済手段が変わるのか
分かりません。構造としては、いくつか考えられます。
- 年齢層 — 広告のクリエイティブによって、届く層が変わる
- 購入の動機 — 迷いながら買う人ほど、支払いを後にしたい可能性
- 端末 — カード情報の入力を避けたい環境
いずれも仮説です。実測して確かめたわけではありません。
確かなのは「広告によって決済手段の構成が変わる」という事実だけです。原因の特定は、また別の作業になります。
何に効くか。3つあります
① 成立率が変わる
許容できる獲得単価を計算するとき、成立率を掛けます。
許容単価 = 期間内の粗利 × (1 − 原価率) × 成立率
この成立率が、広告ごとに変わります。 全社で1つの数字を使うと、後払いの多い広告を過大評価します。
② 物流コストが変わる
代引きを選ぶ人が多い広告では、代引手数料がかかります。ある事業者の実測では、広告別に1件あたり97円から175円まで幅がありました。
③ 入金までの日数が変わる
決済方法によって、売上が立つタイミングが違います。資金繰りに効きます。
測り方
難しくありません。受注データに決済方法の列があれば、それを広告別に集計するだけです。
① 受注データから「広告コード」と「決済方法」を取り出す
② 広告別に、決済方法ごとの件数を数える
③ 比率を出す
④ 広告別に並べて、ばらつきを見る
表計算ソフトでできます。
そして、未入金の割合も同じ方法で出せます。 受注データに入金の状態を示す列があれば、決済方法別に集計してください。
★ 入金の記録が無いことがあります
ここが実務での落とし穴です。
ある事業者のデータを確認したところ、入金の状態を示す列が全件空でした。列は存在します。値が入っていません。
受注は取れています。入金されたかどうかだけが分かりません。
この状態だと、「入金基準の実質CPA」が出せません。 受注ベースの数字しか見られません。
まず、その列に値が入っているかを確認してください。 空なら、カートシステム側で記録されているものを取り込む作業が必要です。
表記の揺れにも注意してください
同じ事業者で、後払いの審査結果を示す列がありました。値が入っていたのは16%だけです。
さらに、全角の「OK」と半角の「OK」が混在していました。片方だけで集計すると、件数が半分になります。
集計する前に、どんな値が入っているかを一覧で出してください。 表記の揺れは、たいてい最初に見つかります。
後払いを減らせばいいのか
そうとは限りません。
後払いを選べることで、購入のハードルが下がっている可能性があります。後払いを外せば、注文そのものが減るかもしれません。
実際に測るなら、決済方法の選択肢を変えたA/Bテストが必要です。そして、その判定には相応の件数が要ります。
この記事で言いたいのは「後払いをやめましょう」ではありません。 広告を評価するときに、決済手段の構成を見ないと順位を間違える、ということです。
期間と工数の目安
広告別の決済構成を出すだけなら、その場でできます。 受注データがあれば、集計だけです。
入金の記録が無い場合は、カートシステム側から取り込む作業が要ります。 ここは相手のシステム次第です。
まず「入金の列に値が入っているか」を確認してください。 これが分かれば、次にやることが決まります。
よくある質問
後払いの未入金は、どのくらいが普通ですか
分かりません。 決済代行会社の審査基準、商材、顧客層によって変わります。上に書いた18倍という数字は、ある1社での他の決済方法との比較です。絶対値ではありません。
広告別に決済構成を見て、どう使えばいいですか
許容単価の計算に反映してください。 後払いの多い広告では、成立率を低く見積もります。それで許容単価が下がり、判断が変わります。
決済手段は顧客が選ぶものです。広告のせいと言えますか
「広告のせい」ではありません。広告によって届く層が変わり、その層の選び方が違うという話です。因果ではなく、相関の観測です。
未入金の分は、いつ確定しますか
決済方法と、代行会社の運用によります。ある事業者では、注文から2日で状態がほぼ確定していました。それより早く判断すると、未確定の分を混ぜることになります。
受注データに決済方法の列がありません
カートシステムの仕様を確認してください。記録されているが、データ基盤に取り込んでいないだけの場合があります。
この分析をするのに、何件必要ですか
比率を見るだけなら、広告あたり100件程度から傾向が見えます。ただし「差が本物か」を言うには、もっと必要です。 判定の基準はA/Bテストのばらつきに書きました。
この記事で扱わなかったこと
- 媒体の数字と受注のズレ →媒体のCVと受注のズレ
- 許容単価の出し方 →許容CPAの出し方
- 物流コストとの関係 →出荷データを広告まで遡る
★ 断定していないこと
私は、広告によって決済手段が変わる理由を特定していません。 年齢層、購入動機、端末という仮説を挙げましたが、確かめていません。
私は、18倍という数字が他の事業者でも同じだと確認していません。 決済代行会社の審査基準に大きく左右されます。
私は、後払いを減らすべきかどうかを検証していません。 選択肢を外したときに注文がどう変わるかは、測っていません。
私は、2.5倍の差が偶然でないことを検定していません。 件数は数百ありますが、統計的な有意性は確かめていません。
相談先
後払いを導入していて、広告の評価にどう反映すべきか決まっていない。あるいは入金の記録が取れていない。そうした段階でご相談ください。
弊社は単品リピート通販・D2C向けに、ECシステム、CRM、運営代行、新規顧客獲得、物流までを扱っています。決済と受注の設計もその一部です。
まず、受注データに決済方法と入金の記録が入っているかを確認するところから始めます。
出典・注記
- 本文中の実測値(広告別の後払い比率17.6%〜44.0%、後払い比率48.7%、未入金18倍、代引手数料97円〜175円、入金の列が全件空、審査結果16%と表記の揺れ)は、国内の健康食品EC1社における2026年6月〜8月の実測です。事業者名・商品名・決済代行会社名は伏せています